社会

マリス博士の著書の驚きの記述!

新型コロナウイルスでの「誤用」が問題になっているPCR検査の開発者でノーベル化学賞受賞者のキャリー・マリス博士の著書を読んでいて衝撃の記述に出くわしました。マリス博士がHIVウイルスが後天性免疫不全症候群を引き起こすことを示す証拠を探してみたら、そのようなものは存在しなかった、というのです。新型コロナウイルスと似た話ではないですか・・・?

出典:マリス、キャリー/福岡伸一訳 (2004)『マリス博士の奇想天外な人生』東京:早川書房(原著 Mullis, Kary (1998) Dancing Naked in the Mind Field. New York: Vintage Booksではpp. 171-182に記載されている部分です。)

1984年、フランスのパスツール研究所のリュック・モンタニエとアメリカ国立衛生研究所(NIH)のロバート・ギャロが、それぞれ独立してレトロウイルスHIV、すなわちヒト免疫不全ウイルスこそがエイズの原因である、と発表した時、私はそのことを、科学的発見がまた一つ増えたのだと感じただけだった。それは、自分の専門である生化学の領域から少しはずれることだったし、なんといっても彼らはレトロウイルスの専門家である。

4年後、私はサンタ・モニカにあるスペシャリティ・ラボ社のコンサルタントとして働いていた。スペシャリティ・ラボ社は赤十字社が一日に収集する何千リットルもの献血液中にレトロウイルスが潜んでいないかどうか、PCRを使って検出する方法を開発しようとしていた。(中略)

私はスペシャリティ・ラボ社のウイルス学者に、HIVがエイズの原因である、という記述の根拠となる論文を引用しておきたいのだが、それはどこにあるのか、と聞いてみた。

「そんな論文の引用は必要ないよ」彼は言った。「それは常識だから」

「いや、そうは言っても根拠とした論文を提示しておきたいんだ」かくも重要な発見を報じた論文なら、なおさら引用しないのはおかしいと思えた。誰でも不思議に思うはずだ。

「どうしてもというなら、CDC週報を引用しておけばいいよ」と彼は言った。そして、米国疾病コントロールセンター(CDC)の週報であるMMWRのコピーを私にくれた。私はそれを読んでみた。それは科学論文ではなかった。そこには、単にあるウイルスが発見されたと報じられているだけで、どのように見つけられたのかは記載がなかった。その週報は、医師たちに向けて、特定の症状を示す患者がいれば報告し、このウイルスに対する抗体で検査するよう依頼していた。週報でも、情報のソースとなるもともとの科学論文は明示されていなかったが、私はもはや驚きはしなかった。週報は、医者向けの広報誌であり、医者たちは情報源を知る必要を感じない。医者にとってみれば、CDCがそう言うのであれば、HIVがエイズの原因だという証明が、どこかにきちんと存在するにちがいないと思っても無理はない。(中略)

私はコンピュータで検索を行なってみた。しかし、モンタニエもギャロも、あるいは他の誰も、HIVがエイズを引き起こすという結論に至った実験について記した論文を公表していなかった。彼らの名前をエイズ研究者として有名にした『サイエンス』誌の論文を読んだが、彼らがそこで述べていたのは、何人かのエイズ患者の中に、過去にHIVに感染した証拠が見つかったということにすぎなかった。彼らはHIVに対する抗体を見つけたのである。ウイルスに対する抗体はつねに過去の病気の痕跡であって、現在の病気の原因かどうかは分からない。抗体はウイルスが身体の免疫系に敗れたというしるしである。患者は自分自身を守ったのである。論文はどれも、HIVがエイズを引き起こすということを示してはいなかった。HIV抗体をもつ人が誰でもその病気になるとも示されていなかった。事実、彼らは抗体をもつのに健康な人を何人も見つけたのだ。

もし、モンタニエやギャロがエイズの原因を見つけていないのなら、彼らが公表した発見とはいったいなんなのであろうか(中略)。

私は「HIVがエイズの原因である」と書くことをためらった。それを支持する論文が見つからないからである。(中略)幾多の研究者たちが年に何十億ドルも費やして、エイズの原因はHIVであるという考えにもとづいて研究を行なっている。その根拠はどこかになければならない。もしそれがなければ、これらの研究者たちが自分の研究の方向をこのような狭い可能性にだけとどめることが許されるはずがない。

これまでに私は数えきれない研究集会でPCRについて講演した。そこんは、必ずHIVの研究者が参加していた。私は彼らに、HIVがエイズの原因であることは、いったいどのようにして分かったのかと尋ねてみた。するとみんなが、何がしかの論文に言及した。そして、それは自宅にあるとか、職場のファイルの中にあると言った。誰もが当然のことのように語り、帰ったらすぐにその論文を送りましょう、と言ってくれた。しかし、私は今まで、いかなる論文も入手できていない。エイズがHIVによって引き起こされることを証明した論文を私に送ってくれた人は一人もいなかった。

あるときついに、モンタニエ博士自身にその根拠を尋ねる機会がきた。(中略)その返答でモンタニエ博士は次のように言った。「CDCレポートを見たらよいでしょう」

私は次のように言った。「読みました。けれど、それはHIVが確実にエイズの原因かどうかという問題に焦点を当てたものではありませんでしたよ」

結局、彼は私に同意した。きつねにつままれたような気がするとともに、怒りがこみあげてきた。モンタニエですら知らないことを、いったい誰が知っているというのだろう。

※その後、デューズバーグ、ギャロ、らに関する生々しい記述が続きます。

HIVはある日突然、熱帯雨林やハイチから出現したものではない。HIVはまさにある日突然、ロバート・ギャロの手中に現れたのである。それは、彼が新しい経歴を必要とした時と一致している。HIVは昔からこの地球上に存在していたのだ。大都市のエイズ患者だけを対象にHIVを捜すから、HIVが年に限局しているように見えるのである。一度それをやめてみれば、HIVがどこにでも存在する普遍的で無害なウイルスであることに気づくだろう。

(中略)

CDCはHIVに対する抗体を検出する検査で、陽性の結果にともなう30以上の症例がエイズであると定義した。しかし同じ症例でも、抗体が検出されない場合、エイズとはみなされない。たとえば、もしHIV陽性の女性が子宮ガンになると、彼女はエイズに患ったとみなされる。しかし、もし彼女がHIV陽性でないのなら、彼女は単なる子宮ガンである。(中略)ケニアやコロンビアの住民は、HIV抗体に対する検査があまりにも高価なので、症状さえあれば、HIV陽性とみなされ、エイズと診断される。 (中略)

公平な方法で入手できる証拠を検証するのでさえ、多くの研究者は拒否している。なさけない話だ。評価の高い科学雑誌も、HIVがエイズの原因であるとする仮説の科学的再検討を求める市民グループによって出された声明の掲載を拒んだ。それは単に「この仮説に対する今ある証拠の徹底的な再検討」の要求にすぎないにもかかわらず、である。

(中略)

私がこの問題について話す時、きまって次のような質問が来る。「もしHIVがエイズの原因でないのなら、何が原因なのか」と。その質問に対する答えは、ギャロもしくはモンタニエがその答えを知らない以上、誰にも分からないということである。私は、HIVがエイズを引き起こすことを示す証拠はないと主張しているのだ。エイズの真の原因が何かは、まだ分からないのだ。(pp. 255-270

-社会