人文死生学研究会での発表

3月22日、人文死生学研究会(共催:心の科学の基礎論研究会)で、以下の内容でお話させていただきます。(研究会のwebページはこちらです。

目:「私の死」は、「私の誕生」は謎なのだろうか?〜「生まれ変わり」現象・臨死体験を通して考える〜
要旨本研究会を牽引してこられた渡辺恒夫先生は、「マッハ自画像の実験」や「独我論的体験」から得られる知見、「私の死の謎とその前提としての私の誕生の謎」や「自己の唯一性の自覚と自他の等根源性の要請との間のパラドックス」に関する考察を通して、「世界中の人間は唯一の私の時を超えて転生する姿に他ならない」とする「遍在転生観」を説いてこられた。

確かにその世界観は「肉体に固定された意識」や「他者の意識との流出入のない隔絶された意識」を前提とした枠組みにおいては整合性を持つものであるが、その前提が崩れた世界においては成立しえない。

本発表では、過去生記憶を持つとする子どもに代表される「生まれ変わり現象」や臨死体験に関する考察を通して「遍在転生観」が依って立つ前提を覆す経験的証拠があることを示したい。

これらの現象は、それを報告する者が一定数いるという意味において、その実在性を否定することはできず、現象や体験の現実性に関する議論とは独立した理論的・哲学的考察の結果として「遍在転生観」に対する代案を提出する根拠となりうる。しかし、これらの現象はその実在性のみならず、現実性を持つものである点は死生学という観点からも重要な事実であると思われる。

たとえば、臨死体験において、医学的には死を迎えた人物が上から自らの肉体や周りの状況を観察していたことを証言し、その内容が細部に至るまで事実と合致していたという報告は、「肉体に固定された意識」という前提に疑義を呈するものである。過去生記憶を持つ子どもが過去生での死を迎えた後の葬儀の様子や、その後、生まれるまでの様子を正確に描写するという事実も、同じ問題を投げかける。

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